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「“紅姫”か……」
低く耳に残るような美声で自分の異名を呼ばれ、私は思考の海から引き上げられた。
何!?
ただでさえフェロモンただ漏れなのに声まで何かエロいんだけど!!
何であんたみたいな美形がモデルじゃなくて族やってんのよ!!
あんたみたいな美形が表紙飾ってたら即雑誌買うわよ!なんていう変な考えを振り払い、口を開く。
「あんたもそろそろ私と戦おうと思ってた所でしょ?「いや」
「だから私から……って……
『いや』?」
私は言われた言葉の意味が理解出来ずに聞き返す。
「俺はお前と戦う気はない」
「どういう事?」
「女じゃ俺の相手にはならねぇよ」
そう言って“黒狼”は私に背を向けた。
私の頭の中で先程の“黒狼”の言葉が何度もエコーする。
そしてついにぷちっと何かがキレた。
「ふざけんな!!」
私の跳び蹴りは見事“黒狼”の背に決まった。
“黒狼”は数歩足を進め、倒れはしなかった。
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