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携帯をとある番号に繋げる。
呼び出し音が数秒鳴った後、ある人物が出てくれた。
『はい、もしもし。霧島ですが、どちら様でしょうか?』
「俺です。椎名太陽です」
俺は今閣下に電話をかけている。
電話に出た瞬間の閣下の声は愛らしい天使のような表向きの声だったが、俺とわかったら一気にトーンが下がった。
『あぁ……なんか用?』
「あの、俺、友達できました!」
そう――俺が言いたかったのは、前橋 颯っていう友達ができたってこと。
閣下にはお世話になったから、言いたかったのだ。
『ふ~ん……そう』
返事は素っ気なかった。
ちょっとショックだ。
「いえ、それだけなんですけど」
『ならもう切っていい?』
ぬあぁあ、閣下と初めての電話なのに! もう通話終了?
「あ、ちょ、まっ、待ってください!」
『なに?』
本当は言いたいことなんかない。ただ閣下と話すのはほんのちょっとだけ楽しいから、もう少し話したかっただけ。
『……友達、できたのよね?』
「え、あっ、えっ、はい!」
まさか閣下から話を振ってくれると思わなくてキョドる俺。
『……よかったわね』
「え」
ブチっ!と切れたかと思うと、ツー……ツー……という寂しい音が鳴り響いた。
電話切れた……。
ちょっと待て、閣下が……よかったねって言ってくれたんだけど!
なんという奇跡! ミラクル!
なんか嬉しい……かも。
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