付録

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 とりあえず、知らない人でホッとする。  クラスメイトだと、案外気まずいんだよね。  当然、「ええ、付き合いましょ」って言えるわけもなく。  目が合うたび、あからさまに傷ついたような視線をそらされたりして、オトコでごめんって思う。オンナじゃなくてごめん。  キミタチに見込みなんてないんだよ、って振舞ってるのにさあ、なんでなんだろうね。 「すみれちゃん、おはよう」  はあ、と控えめにため息を逃がしていると、登校時間の賑わいを押しのけるように伊達男の声がきこえた。 「和樹先輩。おはようございます」 「あ、またラブレター?」  めざとい。伊達男の名も伊達じゃない。 「今手にとったばかりで、まだ中は見ていません」 「ん?」と伊達男は下駄箱を指差す。  おれは苦笑いで返す。 「じゃあ。十中八九ラブレターだ」 「和樹先輩もよくもらいます?」 「“も”ってことは、すみれちゃん、よく貰ってるんだ。よくも僕のすみれちゃんに!」  ……誰のだって? 両手両足結いて、市中引き回したろか、コイツ。  と内心毒づくも、表面は可憐な苦笑いを続行する。 「すみれちゃんは彼氏つくらないの?」  なんて言いながら、さりげなく左側をキープしてくるあたり、オンナ扱いに関してはこのオトコ、只者じゃない。 「好きな人ができれば」  オトコをスキになる趣味はないので、オーソドックスにスルー。 「そりゃそうだ。じゃあまた放課後」伊達男は階段の前で立ち止まった。「僕も1年のときはよく貰ってたけど、2年になればだんだんと落ち着くよ」  だからもうちょっとの辛抱だ、と微笑んで颯爽と人ごみの中に紛れる。  ……アンタの場合は浮名たれ流しだから、普通女子が引いてるってだけなんだけど。
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