お・ま・け

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「遅くなっちゃった!」 小走りで駅から走りながら井上さんのバーに向かう。きっと先に着いている涼介君は不機嫌だ。 今日は同僚の送別会に絶対参加しなければならず、仕事が思ったよりも早く終わった涼介君を井上さんのバーに待たせていた。 先に家に入っていても良いのに、涼介君は私が来るのを待つと言う。そのせいで、送別会中も時計が気になって仕方がなかった。 90分の飲み放題が終わって区切りがついた時点で同僚に挨拶をして店を飛び出した。 それでも、既に涼介君を一時間近く待たせているはずだ。 バーの前で立ち止まり、息を整えながら髪もサッと手櫛で梳かす。 中に入ると案の定、涼介君がカウンターに一人座っていた。
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