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驚くことに、クレリアに抱き締められた瞬間、あたしの中にあった様々な感情が一つに纏まった。
「……いつもありがと、クレリア」
「ん、元気になってくれてよかった」
クレリアには感謝してもしきれないなあ……。
「よしっ!」
「サーシャはちゃんとやればできるんだから、頑張ってね」
あたしはクレリアの言葉に頷くと、謝るために彼に近づいた。
「いや、だから、罰ゲームだよね? 無理しなくていいんだよ?」
「むー……」
……どういう状況よ、これ。
リシェは膨れっ面で唸ってて、それを見ながら必死に話し掛けるあたしの使い魔。
……まあ、いっか。
「ねえ、えっと……」
そういえば名前知らないな、なんて今さら気づいて、思わず口を閉じる。
「あ、僕の名前は恋夜 鏡っていうんだ。よろしくね、サーシャさん」
雰囲気から察してくれたのか、自己紹介をしてくれた。
「えっと……、……レンヤ、さっきはごめんなさい」
「へ?」
「強く当たっちゃったじゃない。これから長い付き合いになるんだし、パートナーに対する物言いじゃなかったわ。ごめんなさい」
「んー……」
あたしが全部の思いを口にすると、レンヤは困ったように笑いながら唸る。
そして、あたしの予想だにしないかったことを、笑顔で口にした。
「確かに物扱いはちょっとショックだったけど、気にしてないから大丈夫」
その笑顔に、優しさに、胸の鼓動が早くなるのがわかった。
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