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『…おはようございます。』
少し緊張気味に挨拶をしながら事務所のドアを開けたわたし。
みんなの視線が集中してこちらに向けられた。
『西野さん。 もう大丈夫なんですか?』
明るくそう声をかけてくれたのは田本さんだった。
『はい。ご迷惑をおかけしました。』
そして山崎さんにも心配をかけた事をお詫びしてからわたしは 諏訪さんに視線を移した。
退院した日から一週間、会社を休ませてもらっていたわたし。
体調もすっかり元に戻り、顔や体のあちこちについていた青あざもよく見ないとわからないくらいにまで薄くなっていた。
目に見える傷跡は日に日に消えてなくなっていったが、わたしの心には簡単には消えない痕が
未だに残っていた。
会社に来る事が 本当は不安でたまらなかった。
だけど それが避けては通れない道だという事もわかっていた。
『西野さん… 体は? もう大丈夫なんか?』
『はい。』
『そうか、よかった。』
ホッと安心したような諏訪さんの優しい顔。
なんだか久しぶりに見た気がした。
『諏訪さん… 今日 お時間いただけますか?』
やっぱり… 逃げてちゃいけないんだ。
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