魔王の調査(前編)

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「マクセル家の使用人はこの国でも才ある者が集まっております。彼らに火を1度点けたら、満足するまで考え実践していきますよ。 今回はエアリアルという答えを持った者がいるので、楽ですけれどもね」 「でも、正直な所は魔法陣に魔力込めるの難しいでしょ?」  僕はそんなガウスさんに悪戯っぽく尋ねると、彼は少しばかり困った表情を露にする。 「ええ、どんなに大口を叩いてもやはり難しいですね。 ですが、ケイトお坊ちゃまという人間でもできるという存在があるからこそ、尚更諦めることはできません」  今度は逆に彼から悪戯っぽくそう言葉を返されてしまい、僕は空笑いを返すことしかできなかった。 「なるべくそのことは秘密でお願いします」 「前に言いましたが、浮気関係以外のことは私の心の中だけに留めさせていただきますよ」  2人でそんな言葉を交わしあい、自然と浮かぶ笑みを交し合う。 「ところで、今日はエアリアルはどうしたの?」  僕はいつもなら、ガウスさんの足元を歩く彼の姿が見えないので尋ねてみた。 「エアリアルは今、旦那様と商談のような物をなさっています」 「商談のような物?」  エアリアルと商談といわれても全くピンと来ない。逆に自ら、前の見えない深い霧中へと足を踏み入れていくような感じ。 「正確にはエアリアルの一族との商談と言った方が正しいでしょう」 「全然分からないんだけど」 「私も旦那様に尋ねられるまで考えてもいませんでしたからね。簡単に言うとエアリアル達にこの領地、特にこの街の守備について貰えないかという相談というより商談ですね」  エアリアル達の一族がこの街を守ってくれる。もし本当にそうなったのならば、これ以上に安全な領地は人間の住む地域に存在しないだろう。 「もし実現すればまず安全だと思うけど、僕達が彼らに何を出せるかな?」 「そう、それです。今それを話し合っているようなのですが、エアリアルは肉料理を俺達の口に合うように作ってくれないか? という方向に話を持っていっていますね」 「肉料理?」  とんでもない物を要求されるのかと思いきや、肉料理という漠然とした物になんだか拍子抜けしてしまう。
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