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「やはりそうでしたか! 実はその魔法陣を使用人の中でもそういった方面に強い者に寸分の狂い無く紙に書き写して貰い、何で書かれているのか等の解析をお願いしていたのです」
「え? そうなると、あの音が外に漏れなくなる魔法陣が手に入ったの?」
そうガウスさんの言葉を聞く限り、あの音を外へと漏らさない魔法陣が手に入ったということになる。
しかし、前魔王達は何故魔法陣を壊して行かなかったのだろうか? 時間が無かったのだろうか?少しだけその辺が気になった。
そのことを彼に伝えると、僕の意見に同意するのように頷く。
「はい、私も最初はそう考えました。普通ならば相手に魔法陣を無傷で残していくなど、罠ではないかと」
「でも、その口ぶりからすると違うですよね?」
「はい、調べていく内に分かったことですが私達人間ではその魔法陣を発動させることができないのです」
どういうことだろう?と首を捻ろうとした時に、ふと頭を横切った記憶。
それはアリスと初めて魔界に行った時に、兵士が説明してくれた転移魔法陣について。
そう人間用の魔法陣全般には、魔力を込めるのを簡単にするようにそうした陣ともいえる物が組み込まれているということ。
つまり、前魔王達のような魔族の使う魔法陣にはその機能が使われていない。
「もしかして、魔法陣に魔力を込めることが出来なかった?」
「はい、その通りでございます。試しにエアリアルに魔力を込めて貰った所、音が外に漏れないというという効力を持った物だとそこで初めてわかりました。
私達にはまだ使うことのできない魔法陣だから、放置しても問題ないということでしょう。ですが――」
ガウスさんは1度、そう口にして言葉をわざとらしく切り口元を持ち上げる。
「その魔法陣を使い、現在使用人全員でエアリアルの指導の下、物への魔力を込める練習をしております」
彼の突然のその言葉に僕は口を開けて、まさにポカーンとすることになった。
敵から入手した魔法陣が使えないからという理由で、使用人さん達は人間の中では初ともいえる技術の練習し始めている。
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