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「しかし、話がまとまるかどうか分かりませんね」
「そりゃ、全く釣り合わないだろうしね」
ガウスさんの言葉に思わず苦笑いがこぼれてしまう。
守ってくれたら、肉料理を作ります。う~ん、僕には全く釣り合う気がしない。
「ですが、エアリアルが言うには食文化の圧倒的に進んだ人間が作る料理には、私達人間にはわからない価値があるそうです」
「僕達には分からない『価値』ってことか」
魔界にある学校でも何度か食事について質問された覚えがある。『人間が作る料理は美味しいんだろ?』と聞かれ、人間の食文化はあらゆる種族の中でも負けない物なのかもしれないと、思った記憶がある。
「とにかく、上手く話が纏まることを祈るしかありません」
「うん、料理担当の使用人さんには頑張って欲しいな」
「そうですね、しかし料理を作る彼とエアリアルは仲が良いようですから大丈夫でしょう。
いつも、肉をくれと言っている内に仲良くなったとも聞いていますし」
「エアリアルも知らないところで、色んなことしてるんだね」
彼の意外な一面に少し驚いていると、ガウスさんがもう1つ問題がと言葉を切り出した。
「もうすぐ戦争に入ってしまうので、彼らの肉を確保できるかもちょっとした問題です。
まぁ皆に訳を説明すれば、きっと協力してくださるでしょうが」
「そこはどうなるかな?」
と何とかマクセル領を少しでも守る手立てはないかと、お互いに意見を出し合いながら考える。
最悪の場合でも、ガウスさんはここの守備に確実についてくれるだろうからなんとかなるだろう。
「私の1つ前の執事長が村人を連れてこちらに来るそうなので、なおさら少々のことでは落ちないと思いますよここは」
「でもガウスさんの1つ前ってことは、失礼だけど相当歳を重ねているよね?」
ガウスさんの一代前の執事長には僕も会った記憶が無い。そんな僕の言葉に対して、ガウスさんは首を縦に振りながらも笑みを絶やさなかった。
「私よりも10程上でしたので、おそらく65歳過ぎだったかと思います。しかし、おそらくまだ人間の中でしたらかなり強いかと」
ガウスさん程の人物が『強い』と口にする人。どんな人か会って見たい気持ちが少しばかり顔を出す。
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