海斗が海斗に戻る日

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しかし海斗からの返答はない。 見てしまった自分が悪いのだから仕方ないのだが、やはり胸が痛んだ。 「…こんな事…言っちゃって大丈夫なの?」 なんとか声を絞り出して聞くと、ため息をつきながら海斗がベッドに腰を降ろす。 「最終回まで視聴率が取れれば、問題ない。俺の評判などどうとでもなるからな。そもそも俺の本職は俳優ではない。本職で成果を出せば、このくらいの発言あっという間に風化されるだろう。」 「……そういうもの?」 あまりに自信満々な言葉に首をかしげる。 すると海斗は片方の口角だけを上げて私を見下ろした。 「俺を誰だと思っている。」 「……」 返す言葉もない。 確かに、海斗がそう言えば本当にそうなる気がしてきた。 いや、確実にそうなるだろう。 安堵から息を吐いてもぞもぞと起き上がる。 そして改めて海斗の顔を見て、口を開いた。 「…ごめんなさい。勝手に不安になっちゃって…言い付けも守れなくて…。」 「…お前の事だから不安に思っているだろうなとは思っていた。まさか今夜会社まで迎えに来るとは思ってもなかったがな。」 言って笑う海斗のに、先ほどまでの怒りは微塵もない。
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