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「………」
広いリムジンの中。
私が鼻をすする音だけがやけに響く。
そんな私を見て目の前に座る遊真は苦笑し、斗真は呆れたようにため息を溢した。
「そんなに泣くか!?中学校の卒業式でっ!」
「だっ…だってえぇぇ~…」
情けない声を出して答えると、隣で海斗がクスッと笑う。
「始まる前から泣いてたぞ。」
容赦なく海斗がバラし、斗真がわざとらしく更に深いため息をついた。
そう。
今日は、愛しい我が家の双子、遊真と斗真の中学校の卒業式だったのだ。
昨日は何故か私が興奮して眠れなかった。
昨日から春休みの里海は私の実家に泊まりに行っている。
「それに卒業式ったって、校舎が変わるだけで同じ敷地内に高校あるし。卒業した気がしねぇよ。」
「エスカレーター式が嫌なら、大学は好きな所を受ければ良いだろう?お前達の自由にして良い。ただ、相談だけはしなさい。」
鼻水を垂らして泣きじゃくる私を無視し、何やら海斗と斗真は違う会話を始めてしまったようだ。
絞れば水分が流れ出そうな程濡れてしまったハンカチで涙を拭い続けていたら、目の前から腕が伸びて来た。
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