1408人が本棚に入れています
本棚に追加
/303ページ
.
「やっぱり拓己君、どうやってここへ?」
「明日香さん!良かった……何でも無くて。でも、何があったんですか?この部屋――」
拓己の質問に、明日香は少し複雑な笑みを浮かべた。
拓己がこの理由を知ったら、どう思うのだろう?
やはり翔が言うように、恐れる気持ちが起こるのだろうか?
しかし、今はそれについて説明をしている暇は無い。
「理由は後で話すわ。早くここを出ましょう。葵は?」
明日香は、微笑んで話を変えた。
「姉貴はマリアさんの気を引き付けてる。その間に俺が来たってわけ」
その時、明日香の後ろから入って来た翔が「拓己」と声を掛けてきた。
拓己が翔に駆け寄って、嬉しそうに微笑む。
「翔さん?今、拓己って……記憶戻ったんだ。俺たちの事思い出したんだ!」
翔は僅かに間を置き、拓己に向かって口角を上げた。
「ああ……心配かけて悪かったな」
「良かった!これでここに居る理由は無くなったね」
「拓己君、急ぎましょう」
明日香に促され、三人はリビングに通じるドアを静かに開けた。
途端にピタリと動きを止める――
葵に銃を突き付けたマリアが、部屋の真ん中に立っていたからだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!