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「そろそろかな」
拓己はエレベーターホールで約束の時間を待ってから、ボタンを押した。
マリアの部屋の前まで行き、ノブを掴みそっと引く。
ドアはスッ―― と開いた。
「姉貴上手くやったな」
いつか見た探偵マンガを真似て、自動ロックが作動しないように葵がドアの鍵穴にガムを詰め込んでおいたのだ。
「マンガも馬鹿に出来ないって事だな――」
拓己は中に入るとリビングを抜けて、昨日翔を見たあの部屋へと向かった。
「翔さん……」
ドアを開けて覗く。
直後に拓己は唖然とした。
窓のガラスが全て無くなり、部屋中にその欠片が散らばっている。
おまけにカーテンもビリビリに裂けていた。
「何……だ?この部屋。何があったんだ―― あっ……そうだ、明日香さん……」
拓己は今度は明日香の名を呼んだ。
「―― 拓己君?」
何度か呼ぶと、部屋の奥にあるドアが開いて明日香が顔を出した。
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