Case 14 ― トランス ―

15/20
1408人が本棚に入れています
本棚に追加
/303ページ
.  マリアは肩を竦め、目を細めた。 「可愛い顔して結構大胆なのね、拓己君。でも、こういうのはあんまり感心しないわね。命が何個あっても足り無いわよ」 「拓己ごめん、ばれちゃった……」 「姉貴!」 「おかしいと思ったのよ。葵さんが一人で来るなんて。そうしたらやっぱりね……」  たった一人の姉へ突き付けられた銃口に、思わず唾をゴクリと飲む。  何故マリアが銃を持っているかという疑問など、思い浮かびもしなかった。 「マリアさん、そんな物しまって姉貴を離して下さい」  拓己は叫びたい気持ちを抑えながら、静かに告げた。 「それで?それからどうするの?」 「明日香さんと翔さんは連れて帰ります。翔さん、もう俺たちの事思い出したし、ここに居なければならない理由はありませんから」  マリアは黙って翔に目をやった。  目が合うと、先に翔が口を開いた。 「マリア、何が目的なんだ?何故こんな事をする」 「そう……この子達の事思い出したの」  青い双眸が細められる。 「あなた達の言い分は解るけど、私には翔の能力が必要なのよ。あの素晴らしい能力がね」 「翔さんの能力って……」  サイコキネシス。  マリアは『窓ガラスや家具は全て吹き飛んで、まるで竜巻に襲われたような有様だった』―― そう説明していた。 「まさか、あの部屋……翔さんが?」  つい今しがた目にした部屋の様子が頭を過ぎり、拓己は声を上げた。 .
/303ページ

最初のコメントを投稿しよう!