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マリアは肩を竦め、目を細めた。
「可愛い顔して結構大胆なのね、拓己君。でも、こういうのはあんまり感心しないわね。命が何個あっても足り無いわよ」
「拓己ごめん、ばれちゃった……」
「姉貴!」
「おかしいと思ったのよ。葵さんが一人で来るなんて。そうしたらやっぱりね……」
たった一人の姉へ突き付けられた銃口に、思わず唾をゴクリと飲む。
何故マリアが銃を持っているかという疑問など、思い浮かびもしなかった。
「マリアさん、そんな物しまって姉貴を離して下さい」
拓己は叫びたい気持ちを抑えながら、静かに告げた。
「それで?それからどうするの?」
「明日香さんと翔さんは連れて帰ります。翔さん、もう俺たちの事思い出したし、ここに居なければならない理由はありませんから」
マリアは黙って翔に目をやった。
目が合うと、先に翔が口を開いた。
「マリア、何が目的なんだ?何故こんな事をする」
「そう……この子達の事思い出したの」
青い双眸が細められる。
「あなた達の言い分は解るけど、私には翔の能力が必要なのよ。あの素晴らしい能力がね」
「翔さんの能力って……」
サイコキネシス。
マリアは『窓ガラスや家具は全て吹き飛んで、まるで竜巻に襲われたような有様だった』―― そう説明していた。
「まさか、あの部屋……翔さんが?」
つい今しがた目にした部屋の様子が頭を過ぎり、拓己は声を上げた。
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