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「あれは、半径五メートル以内じゃないと盗聴できないね」
賢也はソファーに背中を預けながら、足を組み直した。
「そっか、稲葉陽子はよかれと思ってやってくれたんだと思うよ、所詮素人だし、笑わないでやってくれ」
コンビニの駐車場に車を止めた剛士はサングラスを外して、サンバイザーに挟んだ。
「わかってるよ、むちゃしすぎだけどね。稲葉は剛士に惚れてんじゃないの?」
「しょうもなっ」
「あはは、冗談だよ。明日北へ飛ぶんだろ?」
「あぁ、今回は厄介だな」
剛士は運転席の窓を開けて空気を入れ換えた。
「まっ、間違いなく北は造ってるよな」
「先ず間違いないと思う」
「剛士の事だから大丈夫だと思うけど、慎重にやれよ」
「わかってる」
「じゃあな」
お互い電話を切った。
剛士はコンビニで缶コーヒーを買い、車の中で飲んでいた。
車内の時計に目をやると時刻は二時を回っていた。
そろそろ県議会が終わる頃だなと、呟きながらサンバイザーに挟んだサングラスを取り、それをハメながら車のエンジンをかけた。
前原知事の朗報を願う剛士。
車を神戸へと走らせながら助手席に置いてある携帯電話に何度も目を移していた。
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