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剛士は前原知事の電話を切り車を神戸へと走らせていた。
追い越し車線を数十台のパトカーが赤色灯を回転させながら、剛士の車を追い越して行く。
パトカーのサイドには他県を示すネーミングが書かれていた。
被災地神戸へと向かう応援の警察官だとはっきりと確信ができる。
日本中が神戸に集中している事が手に取るように解る。
…………、大震災。
予告のない天災は避ける事は出来ない。
何千人という尊い命を飲み込んだ大地震は、生き残った人々に何を残し、何を伝えたかったのかと剛士はパトカーの赤色灯を見ながら考えていた。
窮地に追い込まれた被災者。
守る側の国。
這い上がろうとする知恵。
群がる欲望。
手を差し伸べる人々。
私利私欲。
絶望。
立ち上がる勇気。
…………、様々な人間模様。
現実に目を逸らさずに、未来に希望を持てる救援や支援を国や自治体に望み、被災者も知恵を出し合い立ち上がって欲しいと願う剛士。
黙っていても、明日は来るのだからと、頭の中で呟いていた。
助手席に置いてある携帯電話が震えた。
ーー 着信 国見 ーー
国税局の国見からだった。
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