騎士団

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 心の成長は身体の成長に伴う。誰が言ったか定かじゃないけど、それが僕の現状を指すのに適した言葉であることは確かだ。  僕がこの世界で目覚めた日から実に十五年が経った。  身体はすっかり元の十八歳だ。とは言え、前世より背も高くなり筋肉質なのは基礎が違うからか、魔法のおかげか、恵まれた身体を手に入れたのは間違いない。  ただ、当時は十八歳の魂に対し三歳児の身体。そう簡単に馴染む筈もなく、凡そ肉体的に成熟する十五歳になるまで思うように活動することができなかった。  つまり三年前、忌まわしきあの事件が起きるまで、僕は僕として不完全な状態だったのだ。  具体的には身体年齢に合わせた幼児退行。身体に、器に魂が押し込められていた感じか。  今日はサイトとしての十八歳の誕生日。いつもより身体が思った通りに動く上に、思考もクリア。ついでに気分も最高潮。  素晴らしい! 僕の魂が完全にこの身体と馴染んだのが分かる。苦節十五年。この身体は漸く僕のものになった。  まあ兎に角、今なら全裸で街を駆け回っても平気だというくらい嬉しい。 「そういう訳で親父、僕は誕生日プレゼントを要求する」 「朝早くから何を言ってるのさ。朝は苦手じゃなかったかい?」 「今気分最高潮なんだよ。細かいことは気にしないでくれ」  朝食を前にして、寝惚けている中年が一人。我が親父。あの日、僕を引き取ったドクターである。  親父は半分寝惚けたまま、僕の言葉に呆れた様子。いつもながら器用な人だと思う。  いつもは薄笑いを浮かべていて本心を悟らせないし、かと言って全く読めない訳でもない。  流石変人と名高い人だ。 .
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