作業服のあなた

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それから私は、彼女が言った『機会があれば教えますよ』という言葉をしつこく引きずった。 教えてもらおうじゃないの。 こっちで機会作ってやろうじゃないの。 自分がなぜここまで櫻井さんに執着しているのか、もはやそんな事はどうでも良くなっていた。 いつも簡単に会える人というのは、用ができると何故か会えなくなる。 今朝の現場巡回では、いつもは会える櫻井さんに会えなかった。 そして午後、用事もないのに現場を徘徊していると、見慣れた青い作業服がようやく目に入った。 やっと見付けた彼女は、工具を手に持ち、しゃがんだ格好で機械のボルトか何かを回していた。
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