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私は、将さんの温かい言葉に涙を浮かべながら、無言で頷いた。
将さんの左隣には私。
将さんの左手には私の右手。
今も変わらない。
さっき、おじさん先生が言っていた言葉を思い出す。
『ちょっとずつでも心を開いてくれるように根気よく…』
『信じる力が大切なんだ』
私は彼の手を離したくない。
私は彼の隣を奪われたくない。
ちょっとずつ心を開いていこう。
信じる力を大切しよう。
少しだけでもいい。
進もう、先へ。
私は自分で涙を拭い、歯を噛み締める。
勇気をもらいたくて、将さんの手を強く握る。
「将さん…」
「ん?」
「あの人……
大島哲也くんって言うの」
「…うん」
「私の、高校の…後輩で…」
「うん」
「あたしが…初めて付き合った人」
そこまで一気に言うと、私は大きな深呼吸をした。
なんだか、また息苦しくなった気がしたからだ。
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