リハビリ

6/12
26233人が本棚に入れています
本棚に追加
/573ページ
私は、将さんの温かい言葉に涙を浮かべながら、無言で頷いた。 将さんの左隣には私。 将さんの左手には私の右手。 今も変わらない。 さっき、おじさん先生が言っていた言葉を思い出す。 『ちょっとずつでも心を開いてくれるように根気よく…』 『信じる力が大切なんだ』 私は彼の手を離したくない。 私は彼の隣を奪われたくない。 ちょっとずつ心を開いていこう。 信じる力を大切しよう。 少しだけでもいい。 進もう、先へ。 私は自分で涙を拭い、歯を噛み締める。 勇気をもらいたくて、将さんの手を強く握る。 「将さん…」 「ん?」 「あの人…… 大島哲也くんって言うの」 「…うん」 「私の、高校の…後輩で…」 「うん」 「あたしが…初めて付き合った人」 そこまで一気に言うと、私は大きな深呼吸をした。 なんだか、また息苦しくなった気がしたからだ。 ・
/573ページ

最初のコメントを投稿しよう!