島の記憶

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「これはたまらんわい。胃の中の物が逆流しそうだ」 ラグードも顔色こそ分からないが、声にいつもの覇気がなく、間違いなくライトと同様に真っ青になっているに違いない。 「船を汚さないでよね。戻すなら海にしてよ?」 「バカを言うな。ワシの胃の中にはデザートイーグルで手に入れた希少な酒が入っているんだ。戻してたまるか」 ラグードにとっては胃の中に収めた酒の方が重要なようであった。 「お酒なんて飲んでるからでしょ? まったく……付き合いきれないわ」 メイはそう言って溜め息をつき、踵を返して船室の方へと歩いて行った。 船酔いとは、自分が実際にそうなってみるまでは辛さが分からないものである。 このあと、メイが三人の仲間入りをしたのは言うまでもない。 四人が元気を取り戻したのは、胃の中の物をすっかり海に吐き出し、しばらくしてからの事であった。 四人がダウンしている間に陽は傾き、巨大な太陽が海に半分姿を隠している。 「クソ! ワシの酒を返せ!」 やっと元気を取り戻したラグードがオレンジ色に染まった海を睨み付けて悪態をついているが、どうなるものでもない。 マリーサ・マリーヌ号は穏やかな海の上をただ進むだけであった。
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