島の記憶

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「やっと落ち着きましたか」 四人が立ち上がったのを見て、一人で海を眺めていたダーバが近寄って来た。 「なんとか……もう大丈夫だと思う」 ライトはそう答えたが、顔色はまだ蒼白く、声にも力が込もっていない。 ダーバはその様子を見て、苦笑いしながら頭を掻いた。 「ダーバ達は大丈夫なのか?」 「私は以前に船に乗った事がありますからね。タウロの旦那達も、おそらく乗った事があるのでしょう」 タウロは先ほど、苦しむライト達の目の前を涼しい顔で船室の方へと歩いて行ったばかりである。 「船の上で一晩眠れば、明日には陸地と同じように生活できるようになりますよ」 ダーバはそう言うと、元居た場所へと戻って再び海を眺め始める。 沈みかけの巨大な太陽を眺めているのか、それともまだ見えぬ大陸を睨み付けているのか、ダーバはそれ以降自ら口を開こうとはしなかった。 陽が完全に沈むと、海は真っ黒に染まり、真っ暗になった空には無数の星達が瞬き始めた。 海と空との境目は、星があるかないかである。 「ねえ……あれ何かしら?」 メイが甲板から身を乗り出して真っ黒な海を指差した。
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