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乾いて赤茶けた土。
朱色に燃える巨大な太陽。
大地に黒い影を落とすのは、戦争の傷を嗅ぐわせる建物の残骸であった。
風が吹けば砂塵が舞い、建物の隙間を縫って不気味な音楽を奏でる。
その街を見下ろせる丘に少年はいた。
周りに人はいない。
ボロを纏ったその姿は乞食のそれで、あからさまに孤児だった。
少年の傍らを軍用車が数台通り過ぎて行く。
少年にとっては見慣れた光景であり、それが少年の日常だった。
物心ついた時から今に至るまで、少年は他の景色を見たことがない。
生きていく事に必死で、つい先日、育て親の肉を喰らったところだ。
そのことについて疑問もなければ不快感もない。
ふと、軍用車の運転手と目が合った。
しかし、バツが悪そうに顔を逸らされる。
自責の念に駆られたか、哀れみ故か。
しかし少年にとっては、どうでもいい事だった。
出来るなら食料を落として行ってくれないか、という甘い希望はあったが、期待はしていない。
どうせ、彼等も灰になるのだから。
少年が見送った先で車両が爆ぜた。
それに遅れて空を裂く音が聞こえてくる。
燃料の燃えカスが軌跡を映す。
その先には、薄桃色のネクストが浮かんでいた。
いつも通りの風景、いつも通りの光景。
少年は無感情な表情でそれを見つめていた。
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