00.魂導者(コンドウシャ)

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 雲の少ない冬の空。  昼時を過ぎて、もう少しで夕暮れに差し掛かろうとする時間帯。  何百メートルとある鉄塔の頂点に立つのは――黒と金の少女。  鋭利な冷たさを持つ風は、その華奢な身体を何度も撫で回す。    その風は、絶え間なく吹き続ける。  そのため、腰まで伸びた稲穂のような金色の髪も。  胸元で留め、腕を通さず着ている黒のコートも、絶え間なくはためいている。  そのはためいているコートの間からは、滑らかな曲線を描いている鎖骨や、透き通るほどの白い肌をした脚。  コートと同じ黒色のハーフパンツが、垣間見えている。  少女の眼下に広がるのは、無数の建造物と小さなビル群。  更に、蟻のような人々の群れ。  少女はそれらを、暗色の瞳で眺め――。 「こっちでは、何か面白い事があるかしら?」  と、呟く。 「まぁ、どこも同じでしょうけど……」  少女はコートの内側から、両の手のひら程の黒い手帳を取り出す。  それを片手に持ち、胸先で開く。  そして手帳に書かれている数々の名前を、もう一方の手の指でゆっくりと辿っていく。  やがてページの最も左上に書かれている数名の名前を確認すると――閉じて内側へと収める。 「さて、行きましょう」  少女は、コートを着ているその背中に開いた穴から、奇妙な形の黒い羽を生やす。  そして――小さく言う。 「魂を導きに……」  少女は跳躍し、鉄塔から虚空へと飛び降りる。    一定高度まで下がり、再び上昇する。  そして背の羽を大きく羽ばたかせ、眼下に広がる景色へと飛んでいった。
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