4269人が本棚に入れています
本棚に追加
/545ページ
一度だけ。
蓮くんは、わたしの知っている蓮くんでなくなった。
激しい怒りに我を失った彼を見たのは後にも先にも、あの時だけだ。
もしかしたら
あの日から、わたしたちの関係は変わってしまったのかもしれない。
ゆっくりと。
でも、確実に。
「じゃあ、浅倉くんと佐和さんがただの幼なじみってことは。
あの噂、本当なのかな?」
「え?噂?」
急に変わった話題についていけず、私は瞬きしながら、森崎サンの言葉に首を傾げた。
松田サンが
「知らないの?」
と、意外そうな顔をして、森崎さんと顔を見合わせる。
「本当かどうか、佐和さんなら知ってるかと思ったのに」
少し不満げにそう言って、松田さんは息を吐くと、口を開いた。
続けて、飛び出した言葉に、
わたしは
いきなり暗闇に突き落とされたみたいに
五感を失った。
「浅倉くんと、二年の吉仲先輩が付き合ってるって噂だよ。
夜、二人で合ってるとこ見たって子が結構いるんだよね」
最初のコメントを投稿しよう!