彼と噂

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一度だけ。 蓮くんは、わたしの知っている蓮くんでなくなった。 激しい怒りに我を失った彼を見たのは後にも先にも、あの時だけだ。 もしかしたら あの日から、わたしたちの関係は変わってしまったのかもしれない。 ゆっくりと。 でも、確実に。 「じゃあ、浅倉くんと佐和さんがただの幼なじみってことは。 あの噂、本当なのかな?」 「え?噂?」 急に変わった話題についていけず、私は瞬きしながら、森崎サンの言葉に首を傾げた。 松田サンが 「知らないの?」 と、意外そうな顔をして、森崎さんと顔を見合わせる。 「本当かどうか、佐和さんなら知ってるかと思ったのに」 少し不満げにそう言って、松田さんは息を吐くと、口を開いた。 続けて、飛び出した言葉に、 わたしは いきなり暗闇に突き落とされたみたいに 五感を失った。 「浅倉くんと、二年の吉仲先輩が付き合ってるって噂だよ。 夜、二人で合ってるとこ見たって子が結構いるんだよね」
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