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二人の高い笑い声が教室に響く。
何人かのクラスメイトが興味を引かれたように、振り返ったけど、すぐに元の会話に戻っていった。
「ねー佐和さん。
一樹と浅倉くんって、最近よく一緒にいるけど、仲いいの?」
「え?」
松田さんの指す、一樹が誰なのか分からず、首を傾げて戸惑っていると、
「あー違う違う。
あれは一方的に一樹が付きまとってるだけみたいよ?」
森崎さんがケタケタ笑いながら、答えてくれた。
「えー?
そーなんだ。でも二人一緒にいると、すごい目立つよね」
「浅倉くんは迷惑がってるみたいだけどね」
「一樹、素行悪いからね。
でも、浅倉くんの、そういう人を寄せ付けない、クールなとこも素敵だよねー」
楽しげに語らう二人の会話についていけず、私は曖昧な笑みを浮かべたまま、聞き役に徹した。
正直、他人から聞かされる蓮くんの人物像は、私の認識と大きく食い違っていて、一致しない。
私の知っている蓮くんは、いつも優しくて、穏やかで、めったに怒ったりなんかしない人だ。
でも、たまにこうして耳にする彼は、クールで無口で気むずかしくて、どこか排他的な印象を受けた。
でも、本当はわかっている。
私が見ている蓮くんは、彼の一面でしかないって。
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