なりすまし

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なりすまし

 穴蔵から出てきた闇の狼は裏庭から納屋にジャンプして家の瓦屋根に飛び移り、身を隠して通りを覗いて、去って行くランドクルーザーと山の方へ向かう三台の車の一団を偵察した。  その時、体の中にいる蛇が毛の中から体を出そうとしたが前足で払って中に押し込む。 『眠ってろ。ボケが』  死の谷に現れた熊の獣と同じで、闇から現れた者は複合的な生物であり、人間を取り込む事は禁止されているが、現生の動物を喰らって体の中に取り込みバージョンアップが可能であった。  地殻変動が起きて、地底で眠っていた古代生物の霊魂が湧き上がり、石に押し潰されて眠っていた者が原生の動物を喰らう事で進化を遂げて闇と現実の次元を行き来している。  今のところは別次元のスペースも出入り口も限られているが、保守派のアンモナイトの角を持つ山羊によれば、これから道は開けると予言した。 『しかし、どうする?車を追うのかよ?お前の足でも、車には追いつけないぜ』  意思のある蛇が顔だけ出して狼に文句を言っている。実は狼の体の中に数匹の蛇が潜んでいて、一匹だけは喋れた。 『ヒッチハイクでもするか?』 『まったく、めんどうな仕事を引き受けやがって。お前の方がバカだ』 『うっせ〜な』
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