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あの死の谷での惨劇は革新派の獣が勝手に暴れて戦いの火蓋を切り、いわゆる確信犯として人間への宣戦布告を仕掛けた。
その時、生き残った猟犬を狼が追うことになったのである。
そして三台の車が死の谷の方へ向かうのを見て、その調査に人間が向かったのだと推理し、抜群のアイデアが閃く。
『いい事を思いついたぜ』
慎重派は全面対決になる事を避け、勢力を固めて万全の体制で人間との平和協定案も考えているが、人間に恨みを持つ獣たちはこのまま戦いに突入するだろう。
狼自身は革新派であるが、人間と全面対決するのは時期尚早だと考え、人間のペットといえど犬族を殺すのはやはり忍びない。
『なりすまして、あの犬を追いかけるか』
闇の狼はあの死の谷へ向かった一団がこの家へ戻って来ると考えたのである。
狼は自分のアイデアを自画自賛し、数日前に体に取り込んであった秋田犬を頭の方から現出させて、被り物でもするように白い毛の犬に変貌してゆく。
つまりシェリフという犬になりすまして、人間たちに近付けば新たな情報を得て本物のシェリフを追えると考えた。
『完璧だぜ』
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