回想: 高梨蒼妃と明かされる過去

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   まずは私の過去から、順を追って話しましょうか。 私は十九年前の二月、京都の山奥にある高梨の分家の四女として生まれました。 一族は私が生まれる何世代も前から、ある問題を抱えていました。 それは、当主の決め方です。 本来本家の跡取りが当主となるべきでしょうが、高梨は単なる武家とは違います。 弱い人間を当主に置くことは、高梨の一族の恥になるのです。 けれど、分家の人間に当主の座を明け渡すことなど、簡単に許せるはずもありません。 長年にわたって、本家と分家の確執は続いていたそうです。 そんな中、本家の跡取りが全員流行り病で死にました。 私が生まれる少し前の事です。 まだ幼かった本家の子供たちは、不幸なことに全員その病に倒れたそうです。 そして、当時の当主にして我が伯母もその病にかかりもはや当主としての役目を果たすことはできなかったのです。 すでに御年九十を超える先代にもう一度当主が務まるはずもなく、図らずも分家から当主を出さなければならなくなったそうです。 そして先代の娘であり、当代最強と謳われていた高梨彰宮(たかなしあきみや)が当主となり、名を姫宮と改めました。 それが、私の母です。     
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