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三年前。
夏休みの午後、とある中学校のグランドでは、各種体育系の部活動の練習が行われていた。特にサッカー部が力を入れており、部員数も多く、グランドのほとんどの場所を占める程だ。
その日はチーム分けを行い、練習試合が行われていた。試合を行う上で、指導する事も無いだろうと生徒達だけにまかせ、顧問教師は職員室に戻った。
その中に、一年生のエースである天王寺聖夜がいた。病気という事では無いが、聖夜は緑色の瞳を持っており、また運動神経も桁外れに良い。
今は、3年生のディフェンスに耐え抜き、ゴール近くまで攻め入ろうとしていた。その試合を、サッカー部のアイドルとして皆から人気のあるマネージャーの上条桜も、コートの傍らで興奮しながら応援していた。
桜は、どんなに取っ付き難そうな者でも分け隔てなく明るく接する態度と、美しい美貌を併せ持つために誰もに好かれていた。各種大会に出向いた時には、他校の生徒達にも気に入られ、ちょっとした有名人となっていた。
「みんな頑張ってー。ファイトー!聖夜君、行けー!」
そんな、皆が試合に集中する中、何処から入り込んだのか何処かの学校の不良生徒が5人、そのマネージャーの背後に回り込んでいる事に誰も気付かなかった。
「おい。ちょっと、俺達にも応援してくれよ。」
「涼しい所に遊びに行こうぜ。」
その者達は、高校生でありながら中学校に入り込み、桜に絡み始めた。
「なあ」と言って桜の腕を掴むと、桜は恐怖に血の気が引き、大きく拒む。
「止めて、止めてよー!!」
そう拒む桜に対し、今度は桜を羽交い絞めにし、不良達は笑いながら着ている服をはさみで切り刻み始めた。
よく見ると、その男達の目は緑色に濁っている。その眼は、聖夜の透き通った緑色とは全然異なるものだ。
「きゃーっ!!」
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