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駅前の雑踏が物凄く五月蝿い。女どものキーキー声が耳障りだ。
俺、三笠賢治(みかさけんじ)は自分が何故、こんな所に立っているのか解らない。
いや、立っている事そのものじゃなくて、立っている理由に対して疑問を抱いているのだ。
『救われない男の子に愛の手を! あなたの恋人承ります!』
このビラがポストに投函されていたから、駄目なんだ。
その謳い文句の下には切り取り線があり、空白の欄がある。
空欄には住所や名前を記入するようになっていて、これを投函主へ返送するようになっている。
空欄の下には更に大きな空欄が設けられていて、ここにはこう書かれている。
『お好きなタイプの女の子をご記入ください(身長やスリーサイズなどの身体的な事項を除く)』
つまり、上の謳い文句と合わせて。
……これはデリバリー系のビラであり。
……俺は恋人がいない歴19年の重圧に負けて、ついにそっちの方向に手を出した訳であり。
何故、思い余ってこんな事を?
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