辺境遠征(前編)

23/23
256人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
「あれでもうちょっと可愛げがあれば、どんな女だって落とせる顔してんだがなぁ。な、テレーもそう思うだろ?」  ワルトの呼びかけにテレーは答えない。  さっきからずっと、眉間に深いシワを寄せたままだ。  やれやれ、とワルトはため息をつく。 「さて、俺たちも戻るとするかね」  ワルトは軽く伸びをすると、竜の手綱をとった。  沼地の上を低空飛行していた二頭の竜はゆっくりと上昇し、東へ向けて飛び立つ。  沼地ではおびただしい数の野生竜の鱗が、夕日を反射して赤く輝いていた。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!