自分と自分の

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 誠吾は奥歯を力一杯に噛み締めながらも、動きを止めてはならないと脚部に神通力を流そうとするが――妖魔達も連撃を繰り出す。  ――錫杖が四方からの一気突き掛かる。  空気を貫く黄土色の錫杖が誠吾の身体を打ち付け「ぐっっ」と悲痛を濁す言葉に、ついに誠吾の動きが止まってしまった。 「――ぐっっ、――覇ッッ!!」 「――?!」 「――グハァッ!」  苦痛に歪ませながら、握る陰陽棍に最大神通力を流しながら、覇気と共に叫び放つ。目映い紫色が波動となり誠吾を中心に波紋状に広がった。神通波動は囲む妖魔達を吹き飛ばす。  ……が、大きく息を乱し、肩で息をする誠吾は既に、負傷し苦しみに耐える。  少なくても、肩、あばら骨にヒビは入っているのが嫌でもわかる。僅かな動きでも骨が軋み、激しい痛覚に満たされるのだ。  妖魔はその好機を見逃さない。直ぐ四体の妖魔が誠吾を囲みながら、手に持つ錫杖を構えた。 「クスクス、下位の烏天狗、妖狐とはいえ、一人でここまでやれるとは思いもよりませんでした。敬意を込めて、苦しまずに殺してあげましょう。……さあ、終わらせなさい」 「いやぁー!! 止めてぇぇッッ!!」  ナオの言葉に合わせ雲母は叫び上げる。しかし、ナオの言葉を耳にした緑色の修験装束の妖狐は、構えた錫杖に妖気を宿し、誠吾の身体に向けて……  ――突く。  叫び上げる無情な雲母の声が拡散するその刹那……  ――突如、吹き荒れる暴風。巨大な風の塊が猛烈に駆け抜けた。  その風は、今まさに誠吾に止めを刺そうとした妖魔達を呆気なく吹き飛ばす。それはまるで、猛風の発生場が誠吾を中心として起きている様に見えた。 「危機一髪と言ったところか。危なかったな」  ……ぁ……ぁ……。  雲母はいつの間にか涙を流しつつ、その女性の声で歓喜に溢れていた。  長く美しい黒髪を持ち、幼い身形ながらのやや露出した着物を来た少女。眼帯すらも愛らしい…… 「一目連さんッッ!!」  雲母の叫びに、一目連は片手を腰に当てながら、にやりと微笑を浮かべていた。
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