クルミと砂糖と干し葡萄

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「ちょっ…何よ……ひとりじゃないって言ったじゃない!」 幸い、引っ張られる方向は砂浜の方で。 何人かが、私の嫌がる声に視線をよこしたけれど、さも関心なさげに水遊びに戻って行った。 「どこから来たの?地元?」 砂底に足を取られながら、徐々に邪魔になる浮き輪を引っ張る男は、肩を真っ赤に焼いていて、きっとナンパ目的で海に来た奴だと、妙に冷静に思った。 「……やっ…だ!」 浮き輪をまたいで、走りだそうとした私は、馴れ馴れしく手首を掴んだそいつに、鳥肌をたてて、振り払った。 「やだって言ってるでしょ!?」 浮き輪は、目の前の男が持っているけれど、私はくるりと振り向いて、砂浜の人の隙間を走った。 水着が、お尻にちょっと食い込んだことなんか、気にはなるけどどうでも、良い。 .
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