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お兄ちゃんが待っていてくれるのは、砂浜に建てられた海の家。
そこの誰かと知り合いなのか、お兄ちゃんは軽く手を挙げて挨拶をすると、気にすることないから商売してろ、と、笑っていた。
もしかすると、笠島の系列での営業なのかも知れないけれど、違うかも知れない。
とにかく私は、知らない人だった。
思えば。
私はお兄ちゃんと同じ父、笠島龍司の血を引くけれど。
笠島本家に行ったことはない。
“克己”にも会ったことが、ない。
それは私が女だからなのかな。
ああいう社会で、役に立たないから、捨てられてる、のかな?
芋洗い、という言葉しか浮かばないような海の表面に浮かびながら。
ゆるく大きな水のうねりに身を任せながら、楽しくなかった私は、そんなことを考えていた。
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