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「イレイシュ…あなたには見てて欲しい…私の…」
イレイシュと呼ばれた少女は、その言葉を聞き入れつつ、その結晶の中から、思念でこう答えた
「…わかったわ…見届けてあげる…せいぜい好きにしなさい」
その結晶は見事にイレイシュの自由を奪っており、思念を放つことはできても、魔力を放つことはままならなかった
しかし、アルセスモアの方も「無」を「有」へと変えた時の消費は大きく、イレイシュを消すことは出来なかったのだ
しかし、結果的にはイレイシュの負けである
…だが、これは本当に負けといえるのか?
相手はまず真っ向から戦うことを放棄している
宣戦布告もせずに攻め込む事と同じ
卑怯なことだ
だが…そこでイレイシュの脳裏には一つの考えがよぎる
「じゃあ…そこで見ててね」
アルセスモアは去った。自らの世界を、本格的に創るために。
踵を返すときちらりと笑顔が見えた
本当に嬉しそうだった…イレイシュもまた…笑顔だった
しかし…黒さが伺える笑みだった…
「…そっか…この戦いにルールは無かったんだね…」
イレイシュは、結晶の中で力尽きた
しかし、その代わりに思念体「霊」へと退化し、結晶から抜け出していった…
アルセスモアはこの事を知らない…
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