幼なじみ

2/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
涼しい風があたしの髪をなびかせる。 人肌恋しい時期に近づいている気配。 きっとあと一ヶ月もすれば街は白一色になって、恋人同士で身を寄せ合う季節になる。 うらやましい・・な。 急にあたしの目の前に誰かが立った。 「行くぞ。」 落ち着いた、人を安心させるきれいな低音の声。 あたしはとっさに目の前に立つ背の高い相手を見上げた。 桜井 ハル(サクライ ハル) 生まれたときから同じマンションに住んでいる。 しかも部屋は隣同士。 小さいときからよく一緒に遊んでた、というか遊んでもらってた・・? 幼なじみってやつだ。 ハルくんは頭いいし、運動神経もいい。 あたしと違って・・。 あたしたちは高校2年になった。 ハルくんとは保育園も小学校も中学校も今までずっと一緒。 近くの同じ病院で生まれて、住むとこは隣で・・ 誕生日も1日違い。 ハルくん家の親もうちの親も「偶然ですねー♪」って嬉しがって意気投合したらしい。 家族ぐるみで仲良しだ。 あたしは、 日向 ななみ(ヒナタ ナナミ) 勉強はそこそこ・・ 運動神経もそこそこ・・ 全然かわいくもないしっ・・ なにか取り柄があるわけでもない。 ハルくんみたいに完ぺきな人じゃない。 自分に絶望中。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!