箱の中から、こんにちは

2/11
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「思ったより安かったわね~」 「型落ちしてる奴だからな。いやあ、いい買い物をした!」  嬉々とした様子で大きな段ボール箱を見つめ、喋ってるのはウチの両親だ。  中に入ってるのは某世界的電子機器会社製の、四十インチの薄型テレビ。値段なんてめっきり分からなかったのだが、予算の約半分で買えた。何でも地デジ化セールだそうで。 「はははっ、ついに宮野さん家も地デジ化かあ……。もしかしたらお宅ぐらいじゃないの? この時期までこんな重いばかりの箱型テレビ使ってるの」 「お恥ずかしい……。それじゃ設置の方をよろしくお願いします」  扇風機の音と、電気屋のオヤジの声が耳を通り、汗が額から頬を通る。驚いた事に、この畳部屋にはクーラーが設置されていないのだ。 「晋吾、接続に時間掛かるから隣でテレビ見ててもいいんだぞ?」 「じゃあそうさしてもらうよ」  汗を拭い、Tシャツの襟首をパタパタさせながら、俺は蒸し暑い畳部屋を後にした。 「ほー! 今のテレビはこんな機能まで付いとるんですか!?」 「ボタン一つで録画出来るなんて……まるでテレビデオみたいですわね!」  背後から聞こえてくる親父とお袋の感嘆と、電気屋のオヤジの苦笑が妙にむず痒かった。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!