ふたり

2/6
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 とっさに表情を作りきれなくて、彼の腕にくっついて顔を伏せた。突然で、思考が高速回転しているような、完全停止しているような。  もしかしたら……もう、終わり、なのかな。 「……ギリギリまで言わない方がよかった?」 彼が頭の上から問い掛ける。まずは、真一さんを困らせたくない。首を横に振った。まだうまく笑顔が作れないので、顔は伏せたまま。 「辞令ひとつで飛ばされちゃう……。サラリーマンってつらいね」 珍しく声色が気弱だったから、私は思わず顔を上げた。  私と離れるの、寂しい?……そうは言ってない……。  自惚れた気持ちはすぐに押し込めた。「私は、大丈夫だから、気にしないで」そういうつもりで、笑顔を作った。彼は私を見て、髪を撫でた。  歳も離れてて、会社員と学生で。私は、まだまだ大人になれてなくて。  私より真一さんにふさわしい人は、他にいる……。  真一さんのためには、ここで終わらせるべきなのかな……。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!