プロローグ

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時は平成――。 科学も発達し、交通手段やらなんやら楽になってきた日本。 勿論、幕末のように刀を持って人を追い掛けるような事はしていない。 「千春」 同じ制服を着た少女に呼ばれたのは、【水無月 千春】 栗色の髪は、毛先にパーマがかかったようにふんわりしている。くりっとした色素の薄い茶色の双眼は、急に呼ばれたせいか大きく見開かれていた。 「水あげすぎ」 「……うわっ」 目線を落としてみれば、自分が水をあげていた花壇の一点だけ水浸しになっている。 片手に持っていたジョウロは水を全て出し切り、重さを失っていた。 隣で同じ様に水を与えていた友達は呆れた表情で千春を見ている。 「しっかりしなって。この花壇の花枯らしたら、部長に怒られちゃうよ」 「はぁーい」 適当な返事を返し ちらっと友達の方を見る。【佐伯 舞】――小学校からの親友で、茶色の(本人は染めてないと言っているが……)短髪は昔から変わらない。 一見、元気いっぱいのスポーツ少女に見えるのだが、何故か私と同じ園芸部に入っている。 部活を決める時に何度も「いいの?」と確認したが、うるさいと一発叩かれてしまう始末。 だからもう……。 理由を聞かない事にした。 .
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