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俺はあの日。
美しくて尊い天使みたいな女の子に出逢ったんだ。
「爽(ソウ)。今日の入学式の挨拶素晴らしかったわよ。五十嵐の名に恥じないよう励みなさい」
そう言って清楚な白いワンピースに身を包み、満足そうに俺の頭を撫でるのは母親だ。
「分かってます。お母さん」
取り繕った笑顔を返して、走り出した車の窓へと視線を移す。
今日は都内の名門私立小学校の入学式。勿論、普通の子供が通う学校とはまるで違い、常に側に執事が居て身の回りの世話をするような「普通」からは掛け離れた成金学校だ。
「爽の立派な姿、敦さんにも見て欲しかったわ」
「……お父さんは海外だから来られないですよ」
「こんな時くらい融通利かせれば良いのに」
窓越しに写るのは母親の不貞腐れた不満そうな顔。そういうこの人だって今日が終わればすぐに海外にとんぼ返りのくせに。
年に半分は海外で暮らす両親のせいで、俺は子供らしさに欠けると屋敷の人達によく言われてきた。寂しくないと言えば嘘になるけど、これが俺達の普通なんだと思えば寂しさも何も感じなくなった。
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