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「きゃっ! 何するのよ、紫苑(しおん)の変態!」
中央集権国家である日輪の国、東州・紫水(しすい)の村。
「ゴ、ゴメン。そんなつもりじゃ――」
「じゃあどういうつもりだったの !?」
強力な魔力を持つ、支配階級の上級人間。一部の魔力・知力・運動能力・芸術などに高い能力を持つ、資本家階級の中級人間。ごく弱い魔法しか使えない、または全く使えない虐げられた生活を送る下級人間。
「泉水(いずみ)が暑いって言うから、涼しくしてやろうと思って」
人口の大多数を占める下級人間は世の中の仕組みに不満を持っていたが、決まりを破れば容赦ない処分を受けるので仕方なくそれに甘んじていた。
「それで、風魔法で着物の裾を捲ったって言うの!?」
紫水の村もそんな下級人間の村だ。
「ゴメンってば。だからさっきから謝ってるじゃないか」
「謝って済む事と済まない事があるのよ」
桜色の着物の裾を押さえてそれでも口を尖らせる泉水に、周囲で畑仕事をしていた大人たちが笑う。
「おいおい、もう夫婦喧嘩か? 紫苑も大変だな」
「いいじゃないか泉水。どうせ夫婦になるんだ。着物の裾の一つや二つ捲らせてやれよ」
「そうだよ。紫苑も男だ。そういう年頃なんだよ」
「そろそろ日も暮れて暗くなるし、丁度いいぞ」
「も―― もうっ!」
途端に泉水は真っ赤になって背を向けた。
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