4人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
広い空間……その中が赤一色に染まっている……
俺の右手から一丁の拳銃が床に滑り落ちた。
拳銃が落ちた俺の足元に一人の女性……『俺が護るべきだった人』が頭から血を流して横たわっている……
(俺はこれまで一体何の為に戦ってきたんだ……)
俺はふと周囲を見回す……
そこには数多の人が倒れており、それらの殆どが赤い炎に包まれ、言い表しようのない嫌な臭いを発していた……
(俺が彼女を護るために戦ってきて……その後に残ったのはいつもこんな風景だった……)
俺の頬に温かい液体が流れる。
俺は左腕から床に垂らししたままだった鎖を再び左腕に巻きつける……
炎の中にあった鎖はかなりの熱さで俺の腕をどんどんと焼いていく……
(この痛み……この苦しみ……俺が今まで奪ってきた命の重さに比べたら……)
俺は腕の痛みに耐えながらゆっくりと身を翻し、右腕を大きく横に振る。
すると、俺の後ろが炎に包まれ、全てが灰になっていく……
(じゃあな……奏奈……俺は、俺が殺した奴らの分の痛みを受け続ける……
決して反撃せず、全ての苦しみをただ受け止める……
戦うのはもうやめる……
能力も使わないようにする……
それを、俺が俺自身に課す戒めとする……)
俺は護るべきだった人……『愛した人』鳴瀬奏奈(なるせかな)に別れを告げると、ゆっくりとそのホールを後にした。
最初のコメントを投稿しよう!