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オルジェに道案内されてメルシオの街を奥へ奥へと歩いていくと、やがて木々が生い茂った道に出た。
「この道を道なりに真っ直ぐ行けば、卯神様のお屋敷に着くわ」
先頭を歩くオルジェが、俺の方を振り返ってそう説明した。
メイド服風のワンピースの裾が微かにふわりと揺れる。
……って、メイド服なのか?それにしては、袖が着物のように広い作りになっているようだが……。
「どうしたの?あたしのことをまじまじ見て……ゴミか何か付いてる?」
無意識にじっと見つめてしまっていたらしい。
ハッと気付けば、怪訝そうに首を傾げたオルジェの顔が間近にあった。
「い、いや、何でもない……」
パッと視線を逸らすと、逸らした先に“天女の涙杯”から飛び出して空中を浮いているティルの姿があった。心なしか、顔はニヤついている。
「な……何、にやけてるんだよ?」
「カシスもお年頃だなって思っただけだじぇ」
目を細めてほのぼのとした口調で言うティルに、うるさいなと言葉を返してからチラとオルジェに視線を戻すと、彼女は何か驚いているように目を丸くしていた。
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