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部活を終えて、家に帰ったオレを出迎えてくれる家族は……、
ーーー誰もいない。
うちは父親も母親も……兄貴までもが多忙で。
家族全員が揃う事なんか滅多にない。
家族は皆それぞれ仕事を抱えているし、そんな状況が当たり前でオレは育ってきた。
だから。ウチの家族がバラバラに日々過ごす事を、特に不思議と思った事もなかったし。
反対に多方面で活躍する、両親を誇らしく思いながら成長した。
人の気配のない、
薄暗くてシーンとした家。
寂しいなんて気持ち……今まで特に感じた事はなかった。
それが、ずっと当たり前だったから。
反対に人と接する事に疲れてた頃は、1人でいる事が心地良いと……思ってたくらい、で。
けど。
昨日ハルがウチに来て一緒にご飯を食べたり、ハルと2人でキッチンに立ったりした事が無性に楽しくて……幸せで、
今、思い出しても。
自然と頬が弛んでしまう、よ。
こんなに人恋しいのは何でなんだろう、な?
ーーーpiriririri piriririri piriririri piririri……
ハルから……電話の着信?
「もしもし……ハル?
どうかした?」
『あ…先輩?
あの……今、電話してもいいですか?』
どこまでも遠慮がちなハルの言葉。
肩の力が抜ける。
「大丈夫だよ?」
『先輩、もう家に着きましたか?』
「ん?……あぁ。
今、帰って来た所だけど。何かあった?」
『あの、ね。大した事じゃないん、です……けど。
…その、お帰りなさいって……言いたくて。ただ、それだけなんですっ!』
……ヤバ、イ。
ウチの彼女、エスパーかも。
いくらなんでも、
タイムリー過ぎる……だろ。
ハルと過ごす内に、いつの間にか『人恋しい』なんていう……そんな感情を知ってしまった、オレ。
そんな、オレに。
今……このタイミングで。
ハルの『お帰りなさい』。
嬉し過ぎる。
ハルが笑顔で、出迎えてくれる姿が目に浮かぶ。
君の将来(さき)と、オレの将来(さき)が重なる日。
そんな日が来ればいい。
心から、そう思った。
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