はじめてのおつきあい side アキ

3/15
5298人が本棚に入れています
本棚に追加
/955ページ
   部活を終えて、家に帰ったオレを出迎えてくれる家族は……、 ーーー誰もいない。  うちは父親も母親も……兄貴までもが多忙で。  家族全員が揃う事なんか滅多にない。  家族は皆それぞれ仕事を抱えているし、そんな状況が当たり前でオレは育ってきた。  だから。ウチの家族がバラバラに日々過ごす事を、特に不思議と思った事もなかったし。  反対に多方面で活躍する、両親を誇らしく思いながら成長した。  人の気配のない、  薄暗くてシーンとした家。  寂しいなんて気持ち……今まで特に感じた事はなかった。  それが、ずっと当たり前だったから。    反対に人と接する事に疲れてた頃は、1人でいる事が心地良いと……思ってたくらい、で。  けど。  昨日ハルがウチに来て一緒にご飯を食べたり、ハルと2人でキッチンに立ったりした事が無性に楽しくて……幸せで、  今、思い出しても。  自然と頬が弛んでしまう、よ。  こんなに人恋しいのは何でなんだろう、な? ーーーpiriririri piriririri piriririri piririri……  ハルから……電話の着信? 「もしもし……ハル?  どうかした?」   『あ…先輩?  あの……今、電話してもいいですか?』  どこまでも遠慮がちなハルの言葉。  肩の力が抜ける。 「大丈夫だよ?」 『先輩、もう家に着きましたか?』 「ん?……あぁ。  今、帰って来た所だけど。何かあった?」 『あの、ね。大した事じゃないん、です……けど。  …その、お帰りなさいって……言いたくて。ただ、それだけなんですっ!』    ……ヤバ、イ。  ウチの彼女、エスパーかも。  いくらなんでも、  タイムリー過ぎる……だろ。  ハルと過ごす内に、いつの間にか『人恋しい』なんていう……そんな感情を知ってしまった、オレ。  そんな、オレに。  今……このタイミングで。  ハルの『お帰りなさい』。  嬉し過ぎる。  ハルが笑顔で、出迎えてくれる姿が目に浮かぶ。  君の将来(さき)と、オレの将来(さき)が重なる日。  そんな日が来ればいい。  心から、そう思った。         
/955ページ

最初のコメントを投稿しよう!