恋と魔導とアルバイト。

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「俺の眼に留まった時点でお前の運命は決まっちまったが…せめて選ばせてやるよ!!」 7月中旬、夜の帳とともに星空より舞い降りた異世界からの来訪者はスッと指を突き出して私に向かい2択を迫ります。 「1つ 運命を受け入れて2ヶ月間俺に絶対服従を誓う!! 2つ 強制魔導で人形のように操られ2ヶ月間奴隷のように俺に尽くす!! 」 彼の話によるとお給料は出るそうなので、ちょ~っと常識が通用しそうにない一夏のアルバイトと考えれば何て事は無いはず…ですよね?? ……それに、私は………… 命の恩もありますし…これから始まる物語の幕を閉ざしたくはないですから…… 「どの道夏休みには、何かアルバイトをするつもりでしたから…そのお仕事、引き受けます」 …でも…… 「本当に私でいいんですか? 私はその…どこをどう見ても、大した取り柄も無い普通の女の子ですよ…内なるパワーがあると思っているならそれは勘違いというやつです!!」 青年はクスッと笑うと私の側まで近付いてきて右手を伸ばし、握手を要求してきた。 「言ったろ 俺の眼に留まったから採用なんだってな!! こう見えても俺は人を見る眼を持ってんだぜ」 「そう…ですか? う~ん… そうですね …じゃあ、そういう事にしておきます!」 私は差し出された彼の手を軽く握って笑顔を返した。 「2ヶ月間というか、正確には…夏休みの期間でしたよね? ふつつか者ですがどうぞ宜しくお願いします …御主人様 」 「ああ、こっちこそ色々と世話になんぜ!! 天鞍 優月…」 彼との出会い、それは…何の変哲も無い日常を過ごしていた私が体験する恋と魔法とアルバイトに満ちた長くて短い一夏の始まり… ……そしてそれが… 私たち2人の行く末である運命という名の未来に辿り着くまでの、素敵な物語の幕開けでもあったんです。
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