第九章 業

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「おい、誰か。利孝様の部隊に、速度を落とすように伝令。我らは足を早め、急ぎ後部に着くぞ。それと、伊野殿を、丁重にお連れしろ。」 忠好の指示が飛ぶなかでも、伊野の震えは止まっていなかった。 頼賢が歩み寄り、刀を首筋に当てた。 斬る気は無いのだろう。刀に気が乗っていない。 それでも、伊野の震えは大きくなっている。 「おい。貴様の元には、どんな甘言が届いたのだ?領地か、はたまた官位か。貴様は何に踊らされたのだ?」 伊野の眼が、有らん限りに、見開かれている。震えもあいまり、見るに耐えない様相になっている。
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