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その日の夕食後、澤田は義兄の渡辺紘平に誘われ、二人で近所の飲み屋に出かけた。
カウンターに並んで座り焼酎の水割りを頼んだ。
「お疲れ様。」
カチンとグラスを合わせる。
「今日は達也の相手ありがとうな。大変だったろう。」
澤田が高校の頃から父の事務所で働いていた紘平は、美波と結婚する前から良く知った仲だった。
「いえ、楽しかったですよ。筋肉痛にはなりそうですけどね。こちらこそ紘平さん…義兄さんに家の事任せきりで、すみません。」
「いや。…今日、親父さんと話、したんだ?」
「ああ、はい。少し。」
澤田はそう言いながらグラスを揺らして中の氷を鳴らした。
「今更、なんですけどね。一度ちゃんと謝りたかったから。」
「で、親父さんは何て?」
「もう気にするなって。姉さんと義兄さんに任せて安心してましたよ。」
「そうか?」
紘平は嬉しそうに微笑んだが、一瞬考えた顔をした後静かに話し出した。
「美波がさ、」
「え?」
「もしかしたら、自分が洋介の可能性を邪魔したのかもしれないって言った事があるんだ。」
澤田はその言葉の意味がすぐに掴めず、聞き返した。
「可能性?」
「うん。美波が自分は設計士になるし、家の事も大丈夫っていつも言ってたから、洋介の選択肢を減らしてしまったのかもしれない…ってね。」
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