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ご近所の幼稚園から賑やかなマーチが聞こえてきた。
時々混ざる子ども達の歓声と大人たちの大きなどよめき、拍手が私の心を混濁させる。
お隣の庭のザクロの実が摘み取られることもなく、我が家の庭に枯れ葉と共に転がり落ちてきた。
そんな些細なことさえ、今の私は冷静に受け止められない。
私は高井 加奈子。
5年目の結婚記念日を3日後に控える29歳。
一回りも離れた主人と二人で暮らしている。
どうしても彼の子どもが欲しくなくて、内緒でリングを入れている。
子どもを欲しがっていた夫の雅之は一時、検査を勧めていたけれど、今は諦めたようだ。
姑には会うたびに「孫は」と聞かれ辟易している。
それに対して、何も言ってくれない雅之にも。
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