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―――ん、
――凛!
はっと目を覚ますと、目の前には光を反射してきらきらと輝く海が広がっていた。
「あら、起きたの。よく寝てたわね。」
「昨日なかなか寝付けなかったから…って、お母さんが起こしたんじゃないの?」
「え?起こしてないわよ。でも、もうすぐ着くからちょうどよかったわ。」
「誰かに呼ばれた気がしたんだけど…。」
不思議に思ったまま顔を正面に戻すと、港や商店街のアーケードが見えてきた。
「おっ、見えてきたな。この日を待ちわびていたぞー!」
そう言って目を輝かせるお父さんはまるで少年のようで少し笑ってしまった。
ガタン、ゴトン
私たちの他にちらほらと乗客が見えるだけの電車は都会とは大違いだ。
春のぽかぽかとした日差しとゆったり流れる時間にとても心地よさを感じる。
「友達、早くできるといいなあ…。」
私たち、宮代一家は都会を離れ、春から猫岬という海辺の町で暮らすことになった。
猫岬にはおばあちゃんが住んでいて、そちらでお世話になることになっている。
お父さんがお母さんの故郷である猫岬をとても気に入っていて、私の中学校卒業を機に猫岬へ移住することになったのだ。
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