第4章:激突

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「漸減要撃作戦における航空打撃戦力の位置づけは、確かに補助戦力ですが、使いようによっては敵主力艦に何らかの損傷を負わせることも可能です。上手くいけば、主力艦の砲撃能力を奪う事や、決戦前に戦列から脱落させることも可能でしょう」 沢村は、航空機で敵戦艦を撃沈する事が可能である、とは明言せず、ただ、敵戦力を削ぐことができるとの旨を口にする。 「しかし、南雲少将の第一航空艦隊は敵航空機動艦隊の撃滅を第一としており、第二航空艦隊に打撃能力が備わっていないことは自明です。つまり、敵主力艦隊へ攻撃を加えることができるのは第二十二航空戦隊と第一九航空戦隊のみなのです。同部隊が地上において壊滅すれば、漸減要撃作戦は失敗が予想され、艦隊決戦時の彼我戦力差で我々が劣ることも考慮されます」 沢村の口調は意見するような物ではなく、相変わらず冷淡である。 それが矜持が高い宇垣の神経を逆撫でする。 「しかし、よく考えてみろ」 宇垣は、沢村の意見を全く受け付けない、という意思を口調に乗せて表した。 「位置を曝せば、貴様の言う事態が我々第一艦隊に降りかかるのだぞ。もし、敵の航空攻撃で長門や陸奥が損傷したらどうする!?ましてや、その損傷が尾を引いて不利な状態で艦隊決戦に挑まなければならなくなった場合の責任は、貴様ごときに取れるのか?」
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